科学哲学日本語ブックガイド

(最終更新 2019年3月20日)

伊勢田哲治

近年日本語でよめる科学哲学の書籍も増えてきたが、そのためどういう順番で何を読めばよいかわからないという問題も生じている。科学哲学に関する情報も最近はかなりインターネットで調べられるようになってきたが、中途半端な知識で書かれた不正確なものも多く、信頼できる書籍の重要性は以前と変わらない。
本リストに収録しているのは日本語の書籍(一部論文)のみである。英語に特に抵抗がないなら、専門外の人でもStanford Encyclopedia of Philosophyなどの英語の情報源に向かった方が効率よく科学哲学の研究動向を知ることができる。


凡例


・紹介した中には絶版書も多いが、図書館等で利用できるだろうことも踏まえて、特に入手可能なものとそうでないものを区別はしていない。
・科学哲学を專門としない人が読むことを想定して選書しているが、入門的な書籍があまりない分野については難しめの本も入れている。それぞれの本に短い説明を加えているが、そこで「研究書」と書いてあるものは、「予備知識がない人がいきなり読む本としてはすすめない」という意味を含んでいる。
・それぞれの本の紹介においては中立はあまり心がけず、むしろ伊勢田からみた評価が明確に伝わることを心がけた。一部ネガティブな評価も含まれているが、あくまで「伊勢田はこう思った」というリストであることは念頭において読まれたい。
・本ブックガイド公開に際しては網谷祐一氏、吉田敬氏、大西琢朗氏、森田紘平氏から情報やコメントをいただいた。ここに謝意を表する。もちろん、記載されている内容の責任はすべて伊勢田にある。
・今後不定期に増補・改訂していく予定。このリストに対してコメントや情報提供を頂ける場合はブログの対応するページのコメント欄をご利用ください。
・更新歴:2019年3月20日、『化学』での連載についての情報を追加しました。


目次


1入門書・概説的教科書

科学哲学の入門書を選ぶ上で一つ気をつけなくていけないのは、その本の「世代」である。現在の科学哲学の主要なテーマはだいたい1980年代ごろにかたまったのだが、日本では一時期まで村上陽一郎氏の影響もあって、その一つ前の「新科学哲学」(クーン、ラカトシュ、ファイヤアーベント)までで紹介がおわる教科書が多かった。すこし古い入門書であれば、さらにその前の論理実証主義や論理経験主義がメインとなっていることもある。自分が知りたいのは何かということに応じて、適当な「世代」の教科書をえらぶ必要がある。


1-1 80年代以降世代の入門書・教科書

この項は冊数も多いので、どのくらい手軽に手にとれるかということの目安として「新書サイズ入門書」「単行本入門書」「本格的教科書」の三段階にわけて紹介する。

1-1-1 新書サイズ入門書

まず、新書サイズで簡単に科学哲学の全体像が把握できる本をいくつか紹介する。

戸田山和久『科学的思考のレッスン』NHK出版新書 2011年

現時点で一番「科学哲学にやさしく入門する」ことができる本。話題をしぼって非常にわかりやすい言葉で現在の科学哲学の中心的テーマを紹介している。科学哲学の全体像がわかるというよりはエッセンスに触れられる本という位置づけだろうか。
ただし、初版にはミスが目立っていたし(
伊勢田による書評参照)、現行の版で多くが修正されているもののまだ不満は残る。

オカーシャ『科学哲学〈一冊でわかるシリーズ〉』廣瀬覚訳 岩波書店 2008年

著者は生物学の哲学の分野を代表する哲学者の一人。手軽に一般科学哲学の全体像が知りたい人にはこの本をすすめる。科学とは何か、科学的推論、科学における説明、実在論、科学の変化といった定番のテーマを網羅し、絶対空間、生物の分類、モジュール説といった個別科学の話題も簡単に紹介するという盛りだくさんぶりである。ただ、記述のしかたがあまりに教科書然としていておもしろみという意味では不満があるかもしれない。
ここしばらく京都大学の科学哲学入門の授業ではこの本を教科書に使っている。
[その際に受講者から指摘されたのだが、この本でのダウン症の事例は誤りが含まれている。オカーシャはダウン症患者は染色体の本数が多いということを単純枚挙の帰納の例として上げている(p.24)が、実際には染色体の本数が多くないダウン症の患者も比率は小さいながら存在するとのことで、単純枚挙が成立していない。]

戸田山和久『科学哲学の冒険 サイエンスの目的と方法を探る』NHKブックス 2005年

センセイとリカ、テツオの学生二人での対話形式で書かれた入門書。80年代以降世代の科学哲学(とくに以下で紹介する区分でいえば一般科学哲学)の主な話題がいろいろ取り上げられているので、オカーシャがつらくて読めないという人はむしろこちらから入門した方がいいかもしれない。
本書の後半は戸田山流科学的実在論の擁護となり、のちの『科学的実在論を擁護する』で展開される考え方がスケッチ的な形で紹介されている。
ただ、論争の整理のしかたには不満があったので合評会でその話をしたことがある(伊勢田の合評会レジュメ

森田邦久『科学哲学講義』ちくま新書 2012年

「対話形式とかいいからオカーシャの本みたいな感じでふつうに日本人の書いたものはないの」という方にはこの本がいいかもしれない。平易な文章で読みやすいが、出版されたときは「この内容だったらわざわざ新しい本を出すこともなかったのでは」と思った記憶はある。ここまでに紹介した本と比べた独自性としては、因果の問題や量子力学の解釈問題など、著者の専門に近い話題が少し盛り込まれていることだが、そこに関しては若干フライング気味かなとおもう部分もあるので注意が必要(「時間対称化された解釈」という独自説を紹介している点など)。

1-1-2 単行本入門書

新書サイズの入門書を1~2冊読んでだいたいの様子がつかめたら単行本サイズの入門書にすすむとよいだろう。これについてもさまざまな難易度や内容のものがある。

伊勢田哲治『疑似科学と科学の哲学』名古屋大学出版会 2003年

さまざまな「疑似科学」とされるものを題材にとりあげながら、それらとの比較で科学とは何かという問題を考えるとともに、科学方法論、科学の変化、科学的実在論といった定番の科学哲学の話題も紹介している。内容は教科書サイズの本としてはやさしめで、読みものとしても成立するように書かれていると思う(というかそのように書いたつもりである)。定番の話題の中で唯一「科学的説明」はまったく取り上げられていないのでそれに興味がある方は他の本で補完されたい。

森田邦久『理系人に役立つ科学哲学』化学同人 2010年

タイトルに「理系人に役立つ」とあるが、とりたてて理系向きに話題や事例をチョイスしてあるわけではなく、スタンダードな科学哲学の入門書となっている。他の入門書では省略されがちな(しかしそれぞれのテーマのサーベイにおいてははずせないような)立場も紹介されているので、興味の対象によっては本書が最適の入門書かもしれない。

坂本百大・野本和幸編『科学哲学 現代哲学の転回』北樹出版 2002年

科学哲学のさまざまな話題をできるだけまんべんなくとりあげて紹介している。他の入門書・教科書と比べて目立つのは物理学や生物学だけでなく「数学の哲学」や「認知科学と心の哲学」についての章があること、科学技術倫理に属する話題も取り上げているところなどであろう。執筆陣は2002年当時で考えると国内で集められるかぎりの豪華な執筆陣だったと言っていいと思う。
欠点としては、16人による共著なので全体の統一性はそれほど高くなく、これだけ多様な話題を取り上げているのでそれぞれの話題はあまり掘り下げられていない(この執筆陣のわりにこの本が定番の教科書になりそこねた理由の一つはそこだろう)。また、「社会科学の哲学」と副題のついた章があって期待させるのだが、そこでもあまり社会科学の哲学の話は紹介されていない。

1-1-3 本格的教科書

この項では、入門書よりももうすこし本格的に科学哲学の全体を網羅的に紹介する教科書を紹介する。

内井惣七『科学哲学入門 科学の方法・科学の目的』世界思想社 1995年

入門書のカテゴリーで紹介した本に比べると本書は扱うテーマの掘り下げ方も一段と深く、章によっては教科書というよりも研究書に近い。他の近年の教科書で扱われていない話題が豊富に含まれているので、入門書として紹介した本を何冊か読んで「そろそろ知ってる話題の繰り返しが多くなってきたな」と思うようになった方には是非その次に読む本としてすすめたい。

西脇与作『科学の哲学』慶應義塾大学出版会 2004年

慶応大学で多くの科学哲学者を育ててこられた西脇先生による教科書。400ページをこえるボリュームに科学哲学のさまざまな話題がつめこまれていて、辞書的な利用もできる本ではないかと思うが、逆に言うと読み物として読み通すのはけっこうつらい。また、本書を貫く視点として「変化」という視点がとられているのだが、これはあまりうまくいっているように見えない(このことについては以前に
書評で書いたことがある)。ここまでに紹介してきた他の本と比べると「個別科学の哲学」に割いている比重が大きいことが目立つし、たとえば近年になるまで生物学の哲学については本書の生物学パートが数少ない入門的テキストだった。

小林道夫『科学哲学』産業図書 1996年

現代の科学哲学よりもかなり科学哲学史の比重が大きく、とくに19世紀末(マッハ、ポアンカレ、デュエム)から論理実証主義くらいの時期の科学哲学についての記述が多い。使われる事例は物理学系が多く、数式も遠慮なく使うのでその点でもハードルが上がっている。ただ、逆に言えばそうした伝統的科学哲学に興味がある人には適した本かもしれない。科学的実在論論争については著者の実在論の立場がかなり強くでていてあまりバランスがとれていない点、また、いわゆる「新科学哲学」の扱いが非常に軽い点などは注意して読んだ方がよいかもしれない。
著者としてはできるかぎりわかりやすく書いているつもりだと思うが、文章の難易度自体もかなり高めだと思う。実は大学に就職して最初のころこの本を教科書として科学哲学の授業をしてみたのだが、学生から「何が書いてあるかさっぱりわからない」という感想をもらって愕然としたことが上で紹介した『疑似科学と科学の哲学』を執筆するひとつの動機となった。

ローゼンバーグ『科学哲学 なぜ科学が哲学の問題になるのか』東克明、森本良太、渡部鉄兵訳、春秋社 2011年

著者は社会科学の哲学や生物学の哲学の研究者で、特に社会科学の哲学では第一人者の一人といってよいだろう。入門書としては本文が400ページ近くあるかなり大部の本である。翻訳特有の読みにくさがある上に、オカーシャと比べると初心者むけの手加減をあまりしてくれていないので、分析系の哲学の翻訳書を読み慣れていない人がいきなり読む本としてはおすすめできない。扱うトピックとしては、論理実証主義系の科学哲学にかなりスペースを割いている印象がある。他方、国内の科学哲学入門書では大きな比重をしめがちな科学的実在論の話題は軽くしかとりあげられていない。


1-2 「新科学哲学」世代の入門書・教科書

ここでは、とりあげるテーマ的にいって少し前の世代に属する入門書、教科書群をあげる。あまり冊数が多くないのでこの項はそれ以上の細分化はしていない。

野家啓一『科学哲学への招待』ちくま学芸文庫 2015年

2004年に『科学の哲学』というタイトルで放送大学の教科書として出版されていたものに増補して文庫化したもの。文庫でよめる科学哲学の入門書は他にないのでその意味では手に取りやすい本だと思う。ただ、内容としては科学史、科学哲学、科学社会学が三部構成で扱われており、科学哲学の比重は小さい。また、紹介されている科学哲学の内容も論理実証主義からクーンのパラダイム論までに限られているので、現在の科学哲学について知る本としてはあまりおすすめできない。もちろん、興味の対象がまさにそのあたりにある方には手始めによい本かもしれない。

高橋昌一郎『科学哲学のすすめ』丸善 2002年

タイトルと、スタイルの手軽さから、科学哲学ってなんだろうと思った人が手に取りがちな本ではないかと思う。実際、科学に関する時事的な話題と科学哲学の話題をからめた読み物としてはありだと思う。しかし、哲学説の紹介の仕方にわたしとしては同意し難いことが多く、入門書・教科書としてはちょっとすすめにくい。また、ポパーやクーンとならべてファイヤアーベントが科学哲学の三大巨頭の一人であるかのような記述(第9章)は、「新科学哲学」世代の本だという前提で考えても、かなり偏っていると思う(ファイヤアーベントを大物扱いするのは高橋氏の問題というより村上陽一郎氏のはやらせた科学哲学史観の問題であろうが)。
[同意しがたいことの例を一つ挙げると、「不完全性定理は、論理実証主義を崩壊させた」(p.48)というのは不完全性定理についても論理実証主義についても大きな誤解をさせかねず、この箇所だけでも本書をすすめない理由になると思う。説明をはじめるとブックガイドの範囲を超えてしまうが、両者は「カルナップ版の統一科学で想定される普遍言語の一番極端なバージョンが完全には成り立たないことが不完全性定理で示されている」という程度の関係で、これは論理実証主義運動全体からすれば大変マイナーな話題にすぎないし、統一科学運動に限ってもノイラート版の統一科学など他のバージョンとは無関係な話題である。]

ルクール『科学哲学』沢崎壮宏・竹中利彦・三宅岳史訳 白水社(文庫クセジュ)2005年

英米系科学哲学についての紹介がクーン、ラカトシュ、ファイヤアーベントら「新科学哲学」で止まっているのでここに分類しているが、この本の特徴はそこではなく、そのあとにフランスの「エピステモロジー」(科学思想史と訳されることも多い)が紹介され、英米系の科学哲学と比較されている点である。これは日本語では他に類書がない。

チャルマーズ『改訂新版 科学論の展開』高田紀代志・佐野正博訳 恒星社厚生閣 2013年

最初は1983年に出版され、その後原書の増補に応じて1985年に新版として改訳されたのち、近年の増補を反映して約30年ぶりに再度改訳された。わたしが学部生だった1980年代には科学哲学の読みやすい入門書はほぼこれしか存在しなかったので、われわれの世代でお世話になった人は多いだろう。するすると読めて読み物として大変優れているのだが、話がよくできすぎているために、帰納主義→反証主義→新科学哲学という変遷がなにか必然的な発展過程ででもあるかのような科学哲学史観を植え付けられてしまう危険性もある。
クーン、ラカトシュ、ファイヤアーベントといったあたりが本書の核をなしているので「新科学哲学」世代に分類したが、増補された章ではベイズ主義や実験の哲学などもっと最近の動きも紹介されている。

内井惣七・小林道夫編『科学と哲学 論理・物理・心・言語』昭和堂 1988年

わたしの直接の恩師たちにあたる方たちの共著による本であり、私自身が科学哲学を本格的に勉強しようというときに最初に手にとった本でもある。論理学・数学の哲学、物理学の哲学、心の哲学についてそれぞれ一章があてられ、「パラダイム論」と「科学的実在論」もそれぞれ一つ章がたてられている。各章とも、サーベイというよりは研究論文の側面が強い。
「新科学哲学」以降の動きとして第五章で科学的実在論が取り上げられてはいるのだが、新しい論争の枠組みがよく見えていなかったのだろうなという感じの書き方である(新しい論者としてはファン・フラーセンとパットナムの内部実在論しかとりあげられていないが、このうち後者は現在の科学的実在論論争ではほぼ言及されなくなっている)。その意味でボーダーライン上ではあるが「新科学哲学」世代に近いと判断してここに分類している。

中山康雄『科学哲学入門 知の形而上学』勁草書房 2008年

タイトルに入門とあるが、後半は完全に著者自身の哲学が展開されていて研究書である。前半も取り上げる話題に著者一流のくせがあって、あまりスタンダードな入門にはなっていない。ここに分類されていることからもわかるように、新科学哲学以降の科学哲学の主要な話題はほとんど取り上げられていない。


1-3 「論理経験主義」世代の入門書・教科書

さらにもう一世代さかのぼると、科学哲学といえば論理実証主義や論理経験主義と呼ばれる立場を指していた時代がある(「論理実証主義」が意味の検証理論などを中心としたハード路線で「論理経験主義」の方がより穏健な立場を指す、とか、ウィーン系が論理実証主義でベルリン系が論理経験主義、とか、いくつか使い分けかたの流派があるが、いずれの用法にせよ 1950年代くらいの立場を指す名前としては「論理経験主義」を使った方が無難)。80年代以降の科学哲学は「新科学哲学」世代よりもこちらの世代との連続性の方が強いので、参考になる面はある。

ヘンペル『自然科学の哲学』黒崎宏訳 培風館 1967年

科学哲学の古典的な話題についてクリアにまとめられている。わたしが留学した1990年代でもこの本の原書は定番の入門書の一つとして学生に勧められていたくらいなので、影響力は非常に大きかったことがうかがえる。

ライヘンバッハ『科学哲学の形成』市井三郎訳 みすず書房 1954年

1980年代に一度復刊されているので、出版年が古い割には手に入りやすい。邦訳タイトルは「科学哲学」の形成になっているが、原題は「科学的哲学」の形成であり、哲学を科学と同じやりかたでやろうというマニフェストである。特に、曖昧な言葉を使った哲学への熱い批判は日本でもわたしの先生たちの世代にかなり影響をあたえたようである。ということで、本のテーマとしては現在言う意味での科学哲学の本ではないのだが、科学的に行われる哲学として紹介される内容の多くは今でいうところの科学哲学(特に物理学の哲学や生物学の哲学)と重なっている。

1-4 科学哲学史

ある程度科学哲学の全体像が把握できたところで、なぜこういう分野が成立したかという歴史的な興味を持つ人もいるかもしれない。以下はそうした背景への興味に答えるための読書案内である。科学哲学の全体像が見えないうちにいきなり読むことはあまりおすすめしない。

ロゼー『科学哲学の歴史:科学的認識とは何か』常石敬一訳 紀伊國屋書店 1974年

原著は科学哲学を通史的にまとめた数少ない書籍として定評がある。ただ、原著は初版以降の科学哲学の進展を反映してどんどん増補改訂されていっているので、英語で読める方には英語の原著の最新版(Losee, J.P, A historical introduction to the philosophy of science, 4th ed. 2001)を強く薦める。

[再掲]内井惣七『科学哲学入門 科学の方法・科学の目的』世界思想社 1995年

19世紀イギリスの科学哲学については本書第二章でかなりくわしく紹介されている。

飯田隆 責任編集『哲学の歴史 11 20世紀2 論理・数学・言語 科学の世紀と哲学』中央公論新社 2007年

科学哲学の歴史に特化した本ではないが、本書の「自然科学の哲学」「ウィーン学団とカルナップ」「科学哲学」などの章を読めば、19世紀末ごろから20世紀なかばくらいまでの科学哲学の歴史を追うことはできる。

伊勢田哲治『科学哲学の源流をたどる 研究伝統の100年史』ミネルヴァ書房 2018年

今の科学哲学の直接の祖先にあたる研究や議論が19世紀ごろにどのようになされていたかを紐解いた本。読者としては一般読者を想定して書いているが、科学哲学全般や19世紀ごろの科学についてある程度予備知識がないと読むのはつらいかもしれない。


1-5 その他

その他、入門書や教科書とは呼び難いが、ある意味で入門や教科書としての役割を果たしうるような本をいくつか紹介する。

中山康雄『科学哲学 ブックガイドシリーズ基本の30冊』人文書院 2010年

科学哲学に関して日本語で読める本のブックガイド。科学哲学というくくりで考えたときにブルーア、ソーカル&ブリクモン、ラトゥール、フラーといったあたりがどの程度適当なのかという点については少し疑問があるが、概ね良心的な選書だと思う。ただ、2010年にこの本が出てから科学哲学の書籍はかなり出版されているので、今30冊を選ぶならかなり異なる選書となるだろうと思う。

須藤靖・伊勢田哲治『科学を語るとはどういうことか』河出書房新社(河出ブックス) 2013年

科学者が科学哲学に対して持つ不満や疑問を率直にぶつけてもらい、科学哲学代表として伊勢田がそれに答えるという体裁の対談。ここまでに紹介された教科書や入門書をいくつか読んで、どうも何がおもしろくてこういうことをやっているのかピンとこない、と思った方(特に理系分野の方)には、この分野の理解のとっかかりとしてこういう本もよいかもしれない。ただ、人文系の研究者でこれを読んだ方からは「攻撃が厳しすぎて精神衛生上よくない」という感想をもらったこともあるので、読まれる場合はそれなりの心の準備をしてから読みはじめ、つらいと思ったらそれ以上読まない、といった注意が必要かもしれない。

西脇与作編『入門 科学哲学 論文とディスカッション』慶應義塾大学出版会 2013年

タイトルに入門とあることから、入門書として使われることを意図した本なのだろうとは思うが、内容はまったく入門的ではない。西脇氏の門下生をはじめとする若手の科学哲学研究者による論文やサーベイと、その論文についての対話、という形でまとめられた本である。科学哲学の入門書としてみたときには「一般科学哲学」にあたる話題がほとんど触れられておらず、「個別科学の哲学」の話題で占められていることが特色であるが、個別科学の哲学の本としてもパランスがとれているとは言い難い。そのほか、本書についてあまり同意できない点について、『科学哲学』誌で
書評したことがある。


2 一般科学哲学(general philosophy of science)

科学哲学のさまざまな領域を分類する一つの視点として、「科学」というものをある程度統一性のあるものとしてとらえ、科学全般について考えるという問題設定の研究と、物理学、生物学など特定の専門分野に最初から話を限定し、その分野で生じる哲学的問題について考えるという問題設定の研究がある。前者を一般科学哲学、後者を個別科学の哲学という。一般科学哲学と個別科学の哲学の境界は実際はそこまで明確ではない(一般論をする場合にもなんらかの事例を使った事例研究の形をとることが多いし、個別科学の哲学をするのに一般科学哲学の問題設定を単純にその分野内に置き換えて考えることもある)。 そこでまず、一般科学哲学に属する話題について順番に文献紹介をしていく。


2-1 科学方法論・科学的推論

主な問い:科学の正しい方法論は何か。過小決定の問題はどう処理されるべきか。帰納的推論は妥当か、帰納推論なしに科学を行うことはできるか。帰納推論はどのように形式化されるか。実験は科学に不可欠か。思考実験やシミュレーションの認識論的地位はどうか。

これは科学哲学の中でも定番中の定番の話題であり、ここまでに紹介してきた入門書・教科書のほとんどが科学方法論や科学的推論についての紹介を含んでいる。

2-1-1 確証のパラドックス

確証のパラドックス(カラスのパラドックス)は一昔まえは科学方法論の議論をするときの定番の出発点だったが、めんどうなわりに今となってはあまり得るものもないので、現在の多くの教科書、入門書では軽く触れるだけだったり、そもそも触れなかったりする。そのため、そのあたりについて特に知りたい人には古めの本を図書館などで探して読んでもらうことになる。

[再掲]ヘンペル『自然科学の哲学』黒崎宏訳 培風館 1967年

本書の中でも第二章から第四章くらいまでが科学の方法論をとりあげている。ただ、出版年代が古いので、ここで紹介している中でも特に図書館等で手に入りにくい部類に属すると思われる。英語も大変平易なので、特に抵抗がなければ原書(Hempel, Philosophy of Natural Science)を入手して英語で読んでもらう方が楽かもしれない。

ブラウン『科学論序説 新パラダイムへのアプローチ』野家啓一・伊藤春樹訳 培風館 1985年

本全体としてはブラウン独自の新科学哲学系の立場を打ち出す本であって入門書ではないのだが、これの第一部は彼が論敵としている論理経験主義の批判的サーベイとなっていて、教科書的にも使える。第二章が「確証」というタイトルで、確証のパラドックスをはじめとする70年代ごろまでの科学方法論の定番のテーマを扱っている。

2-1-2 ポパー

これまで提案されてきたさまざまな科学方法論の中でも、ポパーの反証主義は特に多くの興味を引いてきた。

小河原誠『ポパー : 批判的合理主義 現代思想の冒険者たち 14』講談社 1997年

通俗的なポパーの解説にはけっこう間違いがある。ポパーが何を主張していたか正しく知りたい場合はこの本などが手がかりとしてよいと思う。

ポパー『推測と反駁 科学的知識の発展』藤本隆志ほか訳 法政大学出版局(叢書ウニベルシタス 95) 1980年

ポパーの代表作は『科学的発見の論理』なのだが、そちらは非常にテクニカルなのでポパーについて知りたい人が最初に読む本としてはすすめない。それでもポパー自身の書いたものが読みたいという場合、『推測と反駁』に収録されている講演録「科学---推測と反駁」が最初に読むものとしては手頃だと思う。

2-1-3 確率の哲学・ベイズ主義

科学的推論の一つの定番の立場としてのベイズ主義は確率の哲学上の立場でもあるため、科学方法論と確率の哲学の境界はしばしば非常にあいまいになっている。

[再掲]内井惣七『科学哲学入門 科学の方法・科学の目的』世界思想社 1995年

この本の第6章は確率論のおさらいから入って確率の哲学とベイズ主義について論じており、確率の哲学への入門として優れている。

[再掲]伊勢田哲治『疑似科学と科学の哲学』名古屋大学出版会 2003年

上記の内井第6章ではまだ難しすぎるという場合、もう少し噛み砕いた解説が本書の第五章にあるのであわせて参照されたい。

ラブラス『確率の哲学的試論』内井惣七訳 岩波書店(岩波文庫)1997年

ラプラスの著作自体確率の哲学の古典であるが、それ以上に、訳者による解説がラプラスを理解するのに必要な範囲で確率の哲学全般についての解説となっているためここに挙げた。

[再掲]チャルマーズ『改訂新版 科学論の展開』高田紀代志・佐野正博訳 恒星社厚生閣 2013年

ベイズ主義については本書の第12章(「改訂新版」になって追加された章の一つ)も参考になる。

ギリース『確率の哲学理論』中山智香子訳 日本経済評論社 2004年

日本語で確率の哲学の全体像を知ることができる数少ない本。ギリースは確率の哲学の中でも傾向説と呼ばれる立場の代表的な論者の一人で、本書後半は彼の立場の擁護がメインになるが、前半はさまざまな立場のサーベイとして非常に信頼できる。訳文はあまり読みやすいとはいえない。ある程度何が論点になっているかわからずにいきなり読もうとしても難しいので、上記の内井や伊勢田の簡単な紹介を先に読んでから本書にとりくむことをすすめる。

2-1-4 統計の哲学

統計の哲学は、統計学という数学の一分野の哲学という側面もあるが、科学方法論や確率の哲学と密接に結びつきながら発展してきた領域なのでここに分類している。

ソーバー『科学と証拠 統計の哲学入門』松王政浩訳 名古屋大学出版会

もとはEvidence and Evolutionという進化論の哲学を主なテーマとした書籍だが、その第一章の統計の哲学入門的な内容になっている部分だけを訳したもの。原書は記述を簡潔にするために細かい議論が省略されているのだが、この訳書では膨大な訳注という形でそこを補っていて、読者としては非常に助かる。統計の哲学について知りたいならまず読むべき本。

2-1-5 実験の哲学・シミュレーションの哲学

シミュレーションの哲学は「シミュレーション科学の哲学」という、個別科学の哲学の一分野として成立しつつあるが、このブックガイドでは実験の哲学の発展形という位置づけでここに分類している。

[再掲]チャルマーズ『改訂新版 科学論の展開』高田紀代志・佐野正博訳 恒星社厚生閣 2013年

この本の2013年の版で増補された第13章「新しい実験主義」は、1990年代以降の新実験主義と呼ばれる動きを日本語で紹介した数少ない文献となっている。特に、統計的検定法の考え方を科学全般の方法論に拡張しようというメーヨーの立場を日本語で紹介したものとしては貴重である。

伊藤邦武ほか著『岩波講座哲学 9 科学/技術の哲学』岩波書店 2008年

体系的というよりは雑多なテーマを扱った論文集だが、興味の方向性によっては参考になる章もある。本書第二章の出口康夫「理論と実験---揺れる二項対立」は、実験の哲学やシミュレーションの哲学の近年の(といってももちろん出版当時の)様子をまとめていて参考になる。

グァラ『科学哲学から見た実験経済学』川越敏司訳 日本経済評論社 2013年

タイトルからわかるように実験経済学という分野の哲学的基礎を考える本であるが、内容のほとんどは被験者を使う実験全般にあてはまることであり、より一般的な実験の哲学の教科書として読める。

ワイスバーグ『科学とモデル シミュレーションの哲学入門』松王政浩訳 名古屋大学出版会 2017年

実験の哲学の近年における発展の一つの形態として、シミュレーションを科学の中にどう位置づけるかという問題がある。本書はそのシミュレーションの哲学の領域の代表的な著作を訳したもの。ただし、本書の関心の焦点は、どちらかというと「モデル化する」とはいったい何をしているのか、という点にあって、必ずしも「シミュレーション」が主なテーマではない。


2-2 科学的説明

主な問い:科学における説明はどういう構造を持つか。科学はどういう説明をめざすか(因果関係を明らかにすることか、現象を統一することか)。科学における説明は関心に相対的か。

80年代以降世代として紹介した入門書・教科書の大半が何らかの形で科学的説明をとりあげている。

[再掲]ヘンペル『自然科学の哲学』黒崎宏訳 培風館 1967年

この論争の出発点となったヘンペルの科学的説明に関する「被覆法則モデル」についてくわしく知りたい人にはヘンペル自身の教科書をすすめる。

[再掲]森田邦久『理系人に役立つ科学哲学』化学同人 2010年

この本の第6章「説明とは何か」は、説明の統合説や説明の語用論といった、他の教科書で飛ばされがちな立場も含めて紹介しているので、この論争の全体像を見る上では参考になる。ただ、記述が簡潔すぎて問題意識はよくわからないかもしれないので、そこは他の本とあわせて参照されたい。

[再掲]伊藤邦武ほか著『岩波講座哲学 9 科学/技術の哲学』岩波書店 2008年

本書第一章の中才敏郎「科学的説明の構造」は科学的説明論争のサーベイとして参考になる。


2-3 科学的実在論

主な問い:科学理論は文字通りにうけとるべきか?科学が実在すると考える目に見えない対象は本当に存在すると考えるべきか?科学はそうした対象について明らかにすることを目標としているのか、それとも「現象を救う」ことを目標としているのか。

これもここまでの項と同じく入門書・教科書の定番の話題だが、このテーマに特化した日本語での出版物が比較的多いのが科学的実在論論争の特徴である。

戸田山和久・伊勢田哲治「[往復メールによる科学哲学] 実在論論争---科学に何ができるのか---」『別冊本 RATIO(ラチオ)』第一号〜第六号 2006-2009年

戸田山氏と伊勢田でRATIOという雑誌上で6回にわたって行ったメール対談。戸田山氏が実在論寄り、伊勢田が反実在論寄りの立場で議論を交わす中でそれぞれの立場のモチベーションや考え方を明らかにしようという趣旨の対談。反実在論をとる動機がピンとこないという人がこの論争を理解するための入り口としてはわりとよいのではないかと思っている。

戸田山和久『科学的実在論を擁護する』名古屋大学出版会 2015年

科学的実在論論争に関する入門書的なことはひととおりおさえた上で、もっと本格的にこの論争について知りたい(でも日本語がいい)、という人には、この本のサーベイ的な部分は参考になると思う。この本の
書評をブログに掲載したことがあるのであわせて参照されたい(そこに書いたように、既存の英語の書籍にかなり依拠しているのにそれを明示していないように見える箇所もあって、あまりよくないかなと思うが、サーベイとしての有用性はそれで減るものではない)。

ラウダン『科学と価値 相対主義と実在論を論駁する』小草泰・戸田山和久訳 勁草書房 2009年

全体としてはラウダン特有の科学の方法論を展開した本だが、ラウダンが以前に書いた科学的実在論に関する論文が手直しされてこの本の第五章として収録されている。このもとになる論文(「収束実在論の論駁」)は、科学的実在論論争において「悲観的帰納法」と呼ばれている論法の雛形を示したことで、科学哲学の古典の一つとなっている。ただ、その元論文自体の邦訳はないので、だいたいどんな話をしているか日本語で読みたければこの訳書の第五章を読むことになる。

ハッキング『表現と介入 科学哲学入門』渡辺博訳 筑摩書房(ちくま学芸文庫)2015年

この翻訳は1986年に「ボルヘス的幻想と新ベーコン主義」というサブタイトルがついて産業図書から出ていたが、訳に手をいれつつタイトルも改めてちくま学芸文庫に収録された。ボルヘスは途中でちょっと言及されているだけであまり関係なかったのでサブタイトルを変更したのはよかったと思うが、「科学哲学入門」もそれほど適切なタイトルというわけではない。本書前半は入門書的に読めなくもないが、入門書として見たときにはこのブックガイドの分類でいうと「新科学哲学」世代に属するため記述がちょっと古い(原書が1983年の本なのである意味80年代以降の動きがサーベイされないのは当然)。本書の中心となっているのは後半の著者独自の実在論の立場(近年の論争の整理では「対象実在論」とか「介入実在論」とかと呼ばれる)を展開した部分である。そこに関心がある人にとっては、この本がこうして翻訳で読めるというのは大変ありがたいことである。

ファン・フラーセン『科学的世界像』丹治信春訳 紀伊國屋書店 1986年

現在の科学的実在論論争の枠組みのかなりの部分を作った本であり、論争を理解する上では本書の読解が欠かせない。ただ、議論は非常にテクニカルであり、これから自分でこの分野の研究をしようというのでないかぎり読むことはおすすめできない。

ファイン『シェイキーゲーム アインシュタインと量子の世界』町田茂訳 丸善 1992年

全体としてはアインシュタインの量子力学や実在論についての考え方を検討する本であるが、この本の第七章から第八章にかけて提案される「自然な存在論的態度」は科学的実在論論争の枠組みそのものに一石を投じるものとして注目された。入門的にやさしく書いてあるわけではないが、自然な存在論的態度に興味があるならこれを読むしかない。ただ、翻訳は難があるので、可能なら原書も参照しながら読んだ方がいい。


2-4 科学の変化

主な問い:科学は蓄積的進歩を行っているか。科学理論の交代はどういう仕組みで行われているか、科学的合理性にもとづいて行われているか

科学の変化は「新科学哲学」世代の科学哲学入門書の中心テーマなので、手がかりとしてはそれらの教科書を読むところから始めるとよい。

[再掲]チャルマーズ『改訂新版 科学論の展開』高田紀代志・佐野正博訳 恒星社厚生閣 2013年

「新科学哲学」世代の本として紹介した中でも、この本の第8章から第11章くらいまでがクーン、ラカトシュ、ファイヤアーベントといった中心的な論者の立場を理解する上で特に参考になる。

野家啓一『パラダイムとは何か クーンの科学史革命』講談社(講談社学術文庫)2008年

クーンについて触れている著作は多いが、野家啓一氏による紹介がやはり定番だろう。本書は『クーン : パラダイム 現代思想の冒険者たち 24』として1998年に単行本で出版された本の文庫化なので、間違って両方買わないよう注意。

新科学哲学は一時期非常に流行したこともあり、この系統に属する哲学者たちの著作はかなり翻訳されている。内容的にもそれほどテクニカルなわけではないので、これについては原典の翻訳を読んで見ることも悪くはないと思う。

クーン『科学革命の構造』中山茂訳 みすず書房 1971年

「パラダイム」「科学革命」などの概念を導入し、「科学の変化」という領域を作るだけにとどまらず、科学哲学全体に激震を起こした本。原著は平易に書くように配慮されているし、訳文も固くならないような工夫がされているのだが、そのため「通約不可能性」のようなテクニカルタームがどこにあるかもわからなくなってしまうなど、学術翻訳としてはいろいろ問題がある。これも、英語で読むことに抵抗がなければ英語で読みつつ邦訳をサポートとして使う程度に考えてもらった方がいいかもしれない。

ハンソン『科学的発見のパターン』村上陽一郎訳、講談社(講談社学術文庫)1986年

本書の第一章は「観察の理論負荷性」という概念を導入することで「新科学哲学」の理論的根拠となった。

ラカトシュ『方法の擁護 科学的研究プログラムの方法論』村上陽一郎ほか訳 新曜社 1986年

ファイヤアーベント『方法への挑戦 科学的創造と知のアナーキズム』村上陽一郎・渡辺博訳 新曜社 1981年

いずれも「新科学哲学」を代表する著作。

ローダン『科学は合理的に進歩する 脱パラダイム論へ向けて』村上陽一郎・井山弘幸訳 サイエンス社 1986年

このローダンはすでに出てきたラウダンと同一人物。原音に近い表記ということでラウダンと表記されるのが近年では一般的になっている。ラウダンがこの本で展開した「研究伝統」論が科学の変化についてのそれまでの論争の一種の集大成のような形になっている。


2-5 境界設定問題

主な問い:科学と科学でないものの差は何か。

[再掲]伊勢田哲治『疑似科学と科学の哲学』名古屋大学出版会 2003年

本書は全体として境界設定問題をテーマとして取り上げている。

[再掲]ポパー『推測と反駁 科学的知識の発展』藤本隆志ほか訳 法政大学出版局(叢書ウニベルシタス 95) 1980年

すでに紹介した本書収録の講演「科学 ---推測と反駁」は境界設定問題についての古典でもある。

戸田山和久・出口康夫編『応用哲学を学ぶ人のために』世界思想社 2011年

本書収録の伊勢田哲治「疑似科学問題」は、前掲の2003年の本では扱いきれなかった近年の展開も含め、境界設定問題の全体を見渡せる内容となっている。


2-6 科学の概念分析と形而上学

主な問い:科学理論とは何か(文の集合かモデルか)。法則とは何か(規則性かある種の必然性をあらわすものか)。原因とは何か(あるものが原因と認められるのはどういう条件をみたしたときか)。物理学以外の分野はすべて物理学に還元されるか。科学は統一されるか。科学は目的論的でありうるか。

2-6-1 理論

[再掲]戸田山和久『科学哲学の冒険 サイエンスの目的と方法を探る』NHKブックス 2005年

この本の第8章「そもそも、科学理論って何なのさ」が科学理論をめぐる論争のまとめとしてわかりやすい。

[再掲]森田邦久『理系人に役立つ科学哲学』化学同人 2010年

もう少し教科書的な記述としてはこちらの本の第10章「理論とはなにか」がよく整理されている。

2-6-2 法則

[再掲]森田邦久『理系人に役立つ科学哲学』化学同人 2010年

第8章「法則とはなにか」でこの問題についての代表的な立場が網羅的に紹介されている。

2-6-3 原因

[再掲]森田邦久『理系人に役立つ科学哲学』化学同人 2010年

第7章「原因とはなにか」でこの問題についての代表的な立場が網羅的に紹介されている。

マンフォード、アンユム『因果性 哲学がわかる』塩野直之・谷川卓訳 岩波書店 2017年

因果性をめぐる科学哲学のさまざまな議論があまりテクニカルになりすぎない範囲で丁寧に紹介されている。

2-6-4 還元、機械論

「還元」という概念は科学哲学の中でもいくつかのまったく異なる意味で使われるので注意が必要。ネーゲルの提案した「理論間還元」についての説と、世界のあり方についての一つの立場としての「要素還元主義」は区別する必要がある。機械論的世界観については教科書的な内容であまりよい整理がない。

[再掲]ヘンペル『自然科学の哲学』黒崎宏訳 培風館 1967年

第8章「理論的還元」で、ネーゲル的な還元や機械論対生気論について触れている。

[再掲]伊勢田哲治『疑似科学と科学の哲学』名古屋大学出版会 2003年

この本の第二章でネーゲル的な還元について、第四章で機械論的世界観や要素還元主義について簡単に触れている。

なお、この話題については特に物理学や化学と生物学の間での還元が成立するか、という文脈でよく論じられてきた。それについては生物学の哲学の項を参照。


2-7 科学の倫理学

主な問い:科学は社会的価値とどう関わるか。科学者にはどういう義務があるか。科学者の社会的責任とは何か。

「科学哲学」と言った場合には科学の倫理学を含めて考えることは少ないが、テーマとしては重要であり、科学哲学の教科書類でも取り上げられることのある話題である。

米国科学アカデミー編『科学者をめざす君たちへ 第3版』池内了訳 化学同人 2010年

日本学術振興会『科学の健全な発展のために』丸善 2015年
科学哲学という文脈をはなれて、現在科学者にどういう義務や責任があると考えられているかを知るためにはまずこの2冊。後者は現在の国内のガイドライン等に準拠する形で書かれているので大変実践的でもある。

[再掲]オカーシャ『科学哲学〈一冊でわかるシリーズ〉』廣瀬覚訳 岩波書店 2008年

この本の第7章「科学とその批判者」で、科学と宗教の関係や科学と価値観の関係などを扱っており、最初のとっかかりとしてはよい。

[再掲]野家啓一『科学哲学への招待』ちくま学芸文庫 2015年

第15章「科学技術の倫理」や補章「3・11以後の科学技術と人間」などで科学技術倫理の問題が扱われている。

[再掲]伊勢田哲治『疑似科学と科学の哲学』名古屋大学出版会 2003年

この本の第四章「科学と疑似科学と社会」で、代替医療を例にとりながら科学と社会のあるべき関係について若干考察している。

内井惣七『科学の倫理学』丸善 2002年

科学者の倫理や責任に関するさまざまな話題をとりあげており、また、それについての著者独自の視点からの分析も参考になる。


3 個別科学の哲学(philosophy of particular sciences)

個別科学の哲学は、一般科学哲学の応用という形で問題設定されることもあれば、その分野特有の概念の分析や基礎的な理論の定式化といった作業を行うこともある。対象分野の基礎論と区別がつかないことも多い。


3-1 物理学の哲学

主な問い:量子力学の正しい解釈は何か。時間とは何か、時間と熱力学第二法則の関係はどうなっているか。空間は実在するか。物理理論における不変性とは何か。熱力学の存在論的地位は。超弦理論は科学といえるか。

3-1-1 量子力学の哲学

量子力学の哲学は、日本語でさまざまなレベルの入門書・教科書が出版されていて、その意味では入門しやすい分野となっている(内容そのものがハードなので、あくまで「内容のわりには」であるが)。

[再掲]西脇与作『科学の哲学』慶應義塾大学出版会 2004年

本書第五章「ミクロな変化:量子力学の完全性と不完全性」はかなり詳しく量子力学の哲学を紹介している。

デスパーニア『現代物理学にとって実在とは何か』柳瀬睦男・丹治信春訳 1988年

量子力学の哲学に入門するための読み物として大変優れている。全体像をつかむというよりは問題意識を知るために有用。ベルの不等式についても比喩的な例を使いながらポイントをわかりやすく紹介してくれている。

森田邦久『量子力学の哲学 非実在性・非局所性・粒子と波の二重性』講談社(講談社現代新書)2011年

既存の教科書・解説書類のいいところをうまく取り入れながら論争の全体像を整理してくれているので、論争の構図を整理するのにはよい。ただ、スタンダードな立場の紹介にまざってあまりスタンダードでない著者の独自説も並べてあるのでちょっと注意が必要。

筒井泉『量子力学の反常識と素粒子の自由意志』岩波書店(岩波科学ライブラリー) 2011年

新書サイズではあるが、かなり本格的に現在の量子力学の哲学で何が問題となっているかに迫っており、大変おすすめ。代表的な話題の一つとしてコッヘン-スペッカーの定理があるが、ここで紹介されているバージョンが一番わかり易いと思う。タイトルにいう「素粒子の自由意志」は本書の最後で「自由意志定理」と呼ばれる定理を紹介しているところから来ているが、ここでいう「自由意志」はほぼ「非決定論」と同義であって、素粒子が人間のような意志を持っているというオカルト的な話ではない。そういう誤解をわざわざ誘発するようなタイトルになっているところがちょっと残念。

アルバート『量子力学の基本原理』高橋真理子訳 日本評論社 1997年

議論の理解に必要な範囲で線形代数の入門から入ってくれるので、量子力学の哲学でも問題になる数式の意味は理解したい、という人(線形代数未履修者)にはかっこうの橋渡しとなると思う。記述もわかりやすい。ただ、自由に意訳している箇所がけっこうあるので、アルバートが本当に何を言っているか知りたい人は原書にあたった方がいい。また、最初はあまり目立たないが、後半の哲学的にヘビーな話題になるにつれて誤訳や疑問訳が増えてくる。もう一つ、これは原書の側の問題だが、邦訳9ページの二スリット実験の図が間違っている。

シルヴィア・アローヨ・カメホ『シルヴィアの量子力学』小谷正博訳、岩波書店 2009年

量子力学の哲学関連の本で、シュレーディンガー方程式がどういう式かちゃんと紹介してくれる本はほとんどない。この本は哲学的問題についての紹介はあまりないが、文系の読者にもついていけるようにシュレーディンガー方程式の導出などを紹介してくれているので授業で参考文献として挙げるようにしている。

白井仁人ほか著『量子という謎 量子力学の哲学入門』勁草書房 2012年

量子力学の哲学の研究者4人の共著で書かれた入門書。入門書といっても、ここまで紹介したものに比べるとかなりテクニカルな内容となっており、特に第一部はベルの定理やコッヘン=シュペッカーの定理(本によって微妙に表記にゆれがある)についてより正確な内容を知りたい人にはよい手がかりとなる。ただ、本書後半のさまざまな解釈の紹介については、同分野の他の研究者から疑問点が投げかけられており、単純に信用するのはまずいかもしれない(北島雄一郎
「量子力学における実在性・非局所性・観測―白井仁人・東克明・森田邦久・渡部鉄兵『量子という謎』(勁草書房) に関するノート)

レッドヘッド『不完全性・非局所性・実在主義 量子力学の哲学序説』石垣壽郎訳 みすず書房 1997年

意図としては入門書であるが、扱っている内容のテクニカルさの度合いから言っても文章の難易度から言っても、量子力学の哲学を専門としたい人以外にはおすすめできない。しかし、ここまで紹介したような入門書・教科書が出るまでは、量子力学の哲学で日本語で読めるものは他にほとんどなかったので、興味のある人はみなこれをがんばって読んでいた。コッヘン-シュペッカーの定理はかなり原論文に近いバージョンが紹介されているので、原論文にあたりたい人が準備のために読むのは意味があるだろう。

ブルース『量子力学の解釈問題 実験が示唆する「多世界」の実在』和田純夫訳 講談社(ブルーバックス)2008年

ブルーバックスでは他に量子力学の哲学の本があまりないので、スタンダードな解説書だと誤解して手にとる人がいるかもしれないが、かなり独自性の強い本なので注意。量子力学のさまざまな解釈の中で「多世界解釈」と呼ばれる立場を擁護する本。この解釈に興味があるなら手にとってみるべき。

[再掲]ファイン『シェイキーゲーム アインシュタインと量子の世界』町田茂訳 丸善 1992年

すでに触れたように、全体としてはアインシュタインの量子力学や実在論についての考え方を検討する本であるが、量子力学の哲学として見たときにはかなり特異な立場(しかもその後の実験でほぼ成立の見込みがなくなった立場)を取り上げているので、よほどアインシュタインの量子力学についての考えに興味があるというのでないかぎりすすめない。どうしても読むという場合でも、翻訳に難があるので英語に抵抗がなければ原書にあたった方がよい。

フォン・バイヤー『QBism (キュービズム) 量子×ベイズ 量子情報時代の新解釈』松浦俊輔訳 森北出版 2018年

量子力学の哲学の議論において近年話題になりはじめているQBismという立場についての日本語での最初の書籍。ただ、QBismについて他の立場の人が持つ疑問にはあまり答えてくれていない。

清水明『新版 量子論の基礎 その本質のやさしい理解のために』サイエンス社 2003年

この項の最後に量子力学の哲学を本当にやろうと思った場合の量子力学そのものへの入門書としてこの本を挙げておく。通常の教科書なら飛ばされるような基本的な疑問も取り上げられていて、文系から量子力学に興味をもったというような人にとって親切な本(とはいえ大学で物理学などの授業を受けていない人が一人で読むのは難しいので、内容がわかる人に一緒に読んでもらうことをすすめる)。

3-1-2 時空の哲学

時空の哲学について日本語で得られる情報はまだまだ断片的なので、あまり推薦できる入門書は多くない。 なお、「時間の哲学」と言ったときに、物理学でいうところの時間を考察の対象にする領域と、われわれが経験するものとしての時間を考察の対象にする領域との2つがあり、この2つはなかなか話を通じ合わせるのもむずかしい。ここで取り上げるのは前者の意味での時間の哲学だが、相対性理論成立後は物理的な時間は空間と切り離せなくなったので、「時空」の哲学という形をとることになる。

[再掲]西脇与作『科学の哲学』慶應義塾大学出版会 2004年

本書第七章「時間の変化」の前半は、われわれが経験するものとしての時間の哲学を紹介しているが、後半は時空の哲学の話題が取り上げられている。

ヒンクフス『時間と空間の哲学』村上陽一郎・熊倉功二訳 紀伊國屋書店 1979年

原書の出版は1975年と少し古いが、時空の哲学はそれほど動きの早くない分野なので、70年代までの議論の流れを知ることができる本書は入門書として今でも十分有用だと思う。

ホーウィッチ『時間に向きはあるか』丹治信春訳 丸善 1992年

時間の哲学の古典的入門書。経験するものとしての時間の哲学についても少し触れているが、物理的な時間の哲学に多くのページが割かれている。

内井惣七『アインシュタインの思考をたどる 時空の哲学入門』ミネルヴァ書房2004年

内井惣七『時間の謎・空間の謎』中央公論新社(中公新書)2006年

前者は特殊相対性理論や一般相対性理論の成立の経緯をたどる部分が主で、第六章がそれをふまえた時空の哲学入門となっている。後者は前者でも少し触れられていた関係説力学を大々的にとりあげて検討している。空間の哲学について日本語で読める書籍はほかにほとんどないのでこの分野に興味をもったならまず読むべき2冊である。

シュッツ『相対論入門 第二版』(第一巻 特殊相対論, 第二巻 一般相対論。全体で一冊になっているハードカバー版もある)江里口良治・二間瀬敏史訳 丸善 2010年

時空の哲学を勉強しようと思ったら相対性理論を知らないですませるわけにはいかない。いろいろある教科書の中ではシュッツの教科書が初心者むけの気配りがなされていてとりつきやすい本だと思う(文系から時空の哲学を勉強したいという人にとってハードルが高いことにはかわりがないが)。

3-2 生物学の哲学

主な問い:自然選択とは何か、自然選択はどのレベルで行われるか。生物学における機能とは何か。進化論の観点から人類はどのように理解できるか。進化論はどの程度文化現象に適用可能か。遺伝学と分子生物学の関係は還元的か。生物学に普遍法則は存在するか、普遍法則がないとして生物学理論の地位は。進化論の知見に忠実な分類体系はどういうものか。

3-2-1 生物学の哲学全般

森元良太・田中泉吏『生物学の哲学入門』勁草書房 2016年

取り上げる話題が若干進化論の哲学よりであるものの、現在生物学の哲学で何が問題になっているかの全体像を知るための本としてたいへんおすすめである。

ステレルニー、グリフィス『セックス・アンド・デス 生物学の哲学への招待』松本俊吉監修解題、太田紘史ほか訳 春秋社 2009年

非常に内容豊富な生物学の哲学入門書。ショッキングピンクの表紙でこのタイトルなので生物学の哲学の硬い本だと気づかずに本屋でスルーしてしまいそうになる。原書が出たのが1999年で、その時点での生物学の哲学の主な話題を網羅的に取り上げている。ただ、生物学の哲学は科学哲学の中でもとりわけ変化の激しい分野で、今から見ると取り上げている話題が少し古臭く感じる面もある。
この翻訳ですごいのは、本が厚くなりすぎるために訳書からはカットした章や節について、オンラインで訳文を
無料公開していることである。

マイア『マイア 進化論と生物哲学 一進化学者の思索』八杉貞雄・新妻昭夫訳 東京化学同人 1994年

進化生物学者として著名なマイアによる生物学の哲学に関する論考集。原著Toward a New Philosophy of Biologyは1988年の出版だが、その時期までの生物学の哲学のさまざまな話題がかなり網羅的に取り上げられているので、意外に入門としては悪くないかもしれない(ただ、紹介されている論争のその後についてはもっと新しい本でアップデートしていく必要がある)。500ページ超の大部の本だが、文章は読みやすい。

松本俊吉編著『進化論はなぜ哲学の問題になるのか 生物学の哲学の現在〈いま〉』勁草書房 2010年

日本の生物学の哲学の研究者が結集して生物学の哲学の現在を描き出そうとしている本。タイトルに「進化論は」とあるが、進化論に限定せずに生物学の哲学のさまざまな話題を広くとりあげている。多人数による本なので全体としてのまとまりが薄いのはしかたがない。

ハル『生物科学の哲学』木原弘二訳 培風館 1985年

原書は1970年代にかかれている。ハルは生物学の哲学を代表する哲学者の一人だが、70年代には今の生物学の哲学の主要なテーマがまだほとんど登場していない。理論間還元や目的論などの話題に本書の多くが当てられていることはあとで紹介するとおりだが、そうした話題は近年では下火になっているので、そこに興味があるなら読む価値はあるかもしれない。

3-2-2 進化論の哲学

進化論は生物学の哲学の定番のテーマであるため上記の3つの入門書でもかなりのスペースが進化論についての考察にあてられている。この項では、それに加えて特に進化論に特化した本をいくつか紹介する。

3-2-2-1 進化論の理論的考察

[再掲]西脇与作『科学の哲学』慶應義塾大学出版会 2004年

本書第六章「生命の変化」は進化論をめぐって行われてきた哲学的議論をかなり詳しく紹介している。

ソーバー『進化論の射程 生物学の哲学入門』松本俊吉・網谷祐一・森元良太訳 春秋社 2009年

松本俊吉『進化という謎』春秋社 2014年

前者はソーバーによる入門書、後者はその翻訳にもかかわった松本俊吉氏の著作であるが、取り上げる話題においては重なる点も多く、セットで読んでもよいかもしれない。

デネット『ダーウィンの危険な思想 生命の意味と進化』山口泰司ほか訳 青土社 2000年

ダーウィン進化論の思考法そのものがどういう意味で革新的なのかを論じ、非常に大きな影響のあった本。本文が700ページもあって気軽には手が出せないが、文章そのものは読みやすいので入門むきではある。

3-2-2-2 人間進化の哲学的考察

人間進化に関する考察はいろいろな分野の研究者が参入して展開されている大きなテーマであり、進化生物学や霊長類学といった経験科学と哲学的考察の境目が非常にあいまいである。ここでは哲学者による著作、哲学よりの問題意識で書かれた著作を主にとりあげる。

内井惣七『進化論と倫理』世界思想社 1996年

進化論的観点から人間の倫理をどう理解するかという問題について、歴史上展開されてきたさまざまな説が批判的に検討される。近年の議論については日進月歩なのでもっと最近に出版されたものを参照するべきだと思うが、19世紀のダーウィン、スペンサー、ハクスリーらの議論について知りたければまず本書を参照するべき。

太田紘史編『モラルサイコロジー 心と行動から探る倫理学』春秋社 2015年

本書第二章の田中泉吏「道徳心理の進化と倫理」は道徳の進化をめぐる哲学的議論の近年までの展開を追うサーベイとして参考になる。

中尾央『人間進化の科学哲学 行動・心・文化』名古屋大学出版会 2015年

道徳に限定せず、人間行動の諸側面の進化についてのさまざまなアプローチを比較検討している。

ステレルニー『進化の弟子 ヒトは学んで人になった』田中泉吏ほか訳 2013年

協力行動の進化について、徒弟学習の役割を強調する。

網谷祐一『理性の起源 賢すぎる、愚かすぎる、それが人間だ』河出書房新社(河出ブックス)2017年

人間進化の哲学的考察の中でも、特に「理性」に焦点をしぼっている。そもそも人間は理性的なのか、という論点の検討では、「認知科学の哲学」の側面も持つ。

3-2-2-3 文化進化

人間進化の考察は部分的には文化進化の考察を含むが、文化進化はそのテーマと切り離して独立に論じられる話題でもある。

メスーディ『文化進化論 ダーウィン進化論は文化を説明できるか』野中香方子訳 NTT出版 2016年

文化進化についての研究動向を手際よくまとめている。

3-2-3 生物分類の哲学

このカテゴリーに属する問題として、生物界全体をどのような原理やポリシーによって下位区分に分けていくべきか、という問題や、系統関係をどう復元するのが正しいのか、という分類一般の問題と、分類の一番基礎となる単位としての「種」というものをどのように定義すればいいかといういわゆる「種問題」がある。

三中信宏『系統樹思考の世界』講談社(講談社現代新書)2006年

三中信宏『系統体系学の世界 生物学の哲学とたどった道のり』勁草書房 2018年

三中氏の著作は多く、その多くで生物分類の問題が取り上げられている。ここで紹介しているうち、前者は生物分類の領域で重要な考え方となっている系統樹思考という思考法の紹介、後者は生物分類論争の経緯をかなり濃密に追った本となっている。この論争への哲学者の関わり方は後者の本の4章から5章あたりで詳しくまとめられている。

ソーバー『過去を復元する 再節約原理・進化論・推論』三中信宏訳 勁草書房 2010年

もともと1996 年に蒼樹書房から出版されたが、出版社倒産にともない2010年に今の出版社から復刊された。三中氏の著作を読んで系統推定というテーマに興味を持った人が本格的に勉強したいなら次に読むのはこの本。

[再掲]松本俊吉編著『進化論はなぜ哲学の問題になるのか 生物学の哲学の現在〈いま〉』勁草書房 2010年

生物分類をめぐる問題の中でも独特の発達をしている「種問題」については本書の第六章に網谷祐一氏による解説がある。

3-2-4 生物学における還元・創発・目的論対機械論

[再掲]ハル『生物科学の哲学』木原弘二訳 培風館 1985年

第一章「メンデル遺伝学の分子遺伝学への還元」第四章「目的論」第五章「有機体論と還元主義」など、本の半分くらいが現在の分類でいえば物理主義や理論間還元にまつわる問題にあてられている。

[再掲]松本俊吉編著『進化論はなぜ哲学の問題になるのか』勁草書房 2010年

この本の第五章「理論間還元と機能主義」(太田紘史)は生物学の哲学に限定せずに理論間還元の問題を紹介してくれているので、そこに興味がある人にとっては参考になる。

マラテール『生命起源論の科学哲学 創発か、還元的説明か』佐藤直樹訳 みすず書房 2013年

創発と還元の関係についてのさまざまな立場の紹介としてはこの本もくわしい。生命起源論を科学哲学的に考察するというテーマも日本語では類書がない。研究書なのである程度勉強してから手を伸ばした方がいい。

3-2-5 その他のテーマ

[再掲]西脇与作編『入門 科学哲学 論文とディスカッション』慶應義塾大学出版会 2013年

トピックとして、有機体論や遺伝情報の哲学といった、あまり他の本で取り上げられていない生物学哲学のトピックをとりあげている。


3-3 化学の哲学

主な問い:化学現象は物理現象へ還元されるか。化学物質とは何か、化学物質の同一性の基準は何か。

化学の哲学は英米では1990年代ごろからようやく研究が始まった分野であり、国内ではまだほとんど議論がなされていない。本ブックガイドの趣旨には反するが、この分野について知るためには日本語書籍の範囲ではどうしようもないのでSEPのphilosophy of chemistryの項から始めていただくべきかと思う。

[再掲]マラテール『生命起源論の科学哲学 創発か、還元的説明か』佐藤直樹訳 みすず書房 2013年

この本の第六章「創発と説明」は水の透明性という事例について考察しており、日本語で読める数少ない化学の哲学の議論となっている。

落合洋文「化学者のための哲学 哲学は化学を挑発する」(1)~『化学』2018年1月号より連載中

著者は化学者だが化学哲学の国際会議などにも参加して化学哲学を研究テーマの一つに挙げられている。内容は「化学哲学」に特化しているわけではなく、どちらかといえば化学思想史的な内容や一般科学哲学よりの内容も多いが、狭い意味での化学哲学についての紹介もあり、日本語での貴重な情報源であることはまちがいない。科学哲学全般についての著者の印象はちょっと古いかもしれない(科学哲学の主要な関心が物理学だというのは今ではあまりあたらない、など)。


3-4 心理学の哲学・認知科学の哲学・精神医学の哲学

主な問い:生得観念は存在するか。脳と心の関係は。通俗心理学は神経科学の発達で消滅するか。表象は認知過程の理解に不可欠か。認知過程における感情の役割は。心理学や認知科学における正しい方法論は。

3-4-1 心理学の哲学・認知科学の哲学

信原幸弘編『ワードマップ 心の哲学 新時代の心の科学をめぐる哲学の問い』新曜社 2017年

心理学の哲学は、もともと「心の哲学」と呼ばれていた領域が発展する形で形成されている。しかし、以前の「心の哲学」が心理学や認知科学の研究の進展とあまりかかわらずに哲学的考察を行っていたのに対し、近年では哲学と実証的研究の距離は非常に近くなっている。本書は特に第三部「心の科学と哲学」で、そうした心理学の哲学や認知科学の哲学の基本概念を解説している。

信原幸弘・太田紘史編『シリーズ 新・心の哲学I 認知編』勁草書房 2014年

信原幸弘・太田紘史編『シリーズ 新・心の哲学II 意識編』勁草書房 2014年

信原幸弘・太田紘史編『シリーズ 新・心の哲学III 情動編』勁草書房 2014年

上記の本で興味を持ってもっと本格的に知るためにはこちらの三巻本がよい手がかりとなる。三冊あわせてかなりのボリュームで認知科学の哲学の最先端の動きが紹介されている。

[再掲]太田紘史編『モラルサイコロジー 心と行動から探る倫理学』春秋社 2015年

本書の第二部以降は、道徳をテーマとした認知科学の哲学として読むこともできる。

ダンジガー『心を名づけること 心理学の社会的構成』上下巻、河野哲也監訳 勁草書房 2005年

本自体は心理学の哲学というよりは心理学の歴史を追った本ではあるのだが、歴史叙述が心理学において使われるさまざまな概念の発展を批判的に検討する内容にもなっていて、その意味では心理学の哲学の入門書としても読むことができる。

3-4-2 精神医学の哲学

クーパー『精神医学の科学哲学』伊勢田哲治・村井俊哉監訳 名古屋大学出版会 2015年

スタンダードな科学哲学の手法を精神医学にあてはめた入門的な本。

石原孝二『精神障害を哲学する 分類から対話へ』東京大学出版会 2018年

入門書ではなく研究書ではあるが、クーパーの本では取り上げられていないさまざまな話題を考察の対象としているので、参考となる点は多い。


3-5 社会科学の哲学

主な問い:社会とは何か(個人と独立に存在する実体か、間主観的な存在か、名目的な存在か)。社会学理論と心理学・生物学理論との関係は。社会科学は価値中立的でありうるか。現象学的社会学は科学といえるか。経済学における数理モデルの存在論的・認識論的地位は。合理的経済人という想定はどう理解すべきか。

3-5-1 社会科学の哲学全般

残念ながら現在の社会科学の哲学全般について手軽に知ることのできる入門書・教科書はいまのところ存在しない。さまざまな書籍を断片的に利用していくような形になる。

吉田敬 「社会科学の哲学の動向」『日本科学哲学会ニューズレター』40号 2008年

短い記事だが近年の社会科学の哲学の様子が日本語で紹介されている文書は他に少ないので勧めている。

ラドナー『社会科学の哲学』塩原勉訳 培風館 1968年

日本語で「社会学の哲学」というタイトルを冠して出版された数少ない本の一つなのだが、残念ながらあまりおすすめできる内容となっていない。本書の大半は当時(原書出版が1966年)の主流の科学哲学である論理経験主義を社会科学にもあてはめてみた、というだけの内容である。ただ、第二章冒頭の理念型についての紹介や第四章の社会科学の客観性についての議論は今読んでも参考になるところはあるかもしれない。

ウィンチ『倫理と行為』奥雅博・松本洋之訳 勁草書房 1987年

ウィンチ『社会科学の理念 ウィトゲンシュタイン哲学と社会研究』森川真規雄訳 新曜社 1977年

自然科学に対する社会科学の独自性を主張する哲学者の中でも代表格のウィンチの本の邦訳。前者収録の論文「未開社会の理解」は解釈主義(社会科学の目的は人々が世界をどう解釈しているかを明らかにすることだという立場)の古典的論文。後者では社会現象を理解する上で「意味」などの概念の重要性が論じられる。どちらも入門書ではないものの、このタイプの科学哲学について日本語で読める数少ない書籍であるので、このテーマに興味があるなら見つけて読んで見る価値はある。

野村康『社会科学の考え方 認識論、リサーチ・デザイン、手法』名古屋大学出版会 2017年

社会科学の哲学が対象とするべきさまざまな方法論について知ることができる。本書自体、哲学的な議論を背景として使っているので社会科学の哲学という側面がある。

キング、コヘイン、ヴァーバ『社会科学のリサーチデザイン 定性的研究における科学的推論』真渕勝監訳 勁草書房 2004年

ブレディー、コリアー編『社会科学の方法論争 多様な分析道具と共通の基準 原著第二版』泉川泰博・宮下明聡訳 勁草書房 2014年

この二冊は社会科学の方法論をめぐる近年の大きな論争をめぐる本。前者は論争の発端となった本の邦訳で、定性的研究を定量的研究の枠組みに統合するような研究デザインの方向性を提示している。著者3人はいずれも社会科学者だが、背景として科学哲学における議論がかなり踏まえられている。
それに対する批判的検討論文をあつめたのが後者。2008年に原書第一版の訳が出ており、2014年の版は原書の改訂を踏まえた改訳となっている。第二版でいくつかの章が増補され、いくつかが削除されたのだが、第二版で削除された章については翻訳が出版社ウェブサイト上で公開されている。

ガーツ、マホニー『社会科学のパラダイム論争 2つの文化の物語』西川賢・今井真士訳 勁草書房 2015年

これもキングらの主張に対する批判的な対案という性格が強い。キングらと比べて定性的な研究の独自性を主張しているが、いわゆる解釈主義には与していない。

佐藤俊樹『社会科学と因果分析 ウェーバーの方法論から知の現在へ』 岩波書店 2019年

副題にあるようにウェーバーの方法論をウェーバーの諸論文の読解から明らかにするのがこの本の大きな縦筋になっているが、そのプロセスで19世紀から現代にいたる社会科学の哲学の話題がかなり広範囲に取り上げられているので、そうした観点からも読むことができる。

サール『社会的世界の制作 人間文明の構造』三谷武司訳 勁草書房 2018年

グァラ『制度とは何か』瀧澤弘和・水野孝之訳 慶應義塾大学出版会 2018年

いずれも社会科学の哲学の一部門としての社会的な対象(制度等)の存在論についての論考。特にサールのこの問題についての一連の論考は大きな注目をあつめてきた。どちらも研究書。

3-5-2 経済学の哲学

社会科学の哲学が国際的にもあまり人気がないのに比して、その中で経済学の哲学は比較的関心を集めてきた。

ウェイド・ハンズ『ルールなき省察――経済学方法論と現代科学論』高見典和ほか監訳、慶應義塾大学出版会、2018年

経済学方法論についての科学哲学的議論を本格的に知ることができるが、科学哲学や科学技術論についてかなり予備知識がないと読むのは大変。

[再掲]グァラ『科学哲学から見た実験経済学』川越敏司訳 日本経済評論社 2013年

すでに実験の哲学の教科書として紹介したが、経済学の新しい一分野としての実験経済学の方法論について論じた本としてももちろん読むことができる。


3-6 歴史科学の哲学

主な問い:歴史について科学は成立するか。歴史科学における説明は他の科学における説明と同じか。研究者の解釈は歴史科学に不可欠か。

「歴史科学」は、近年の科学哲学では、歴史学を含みつつも、「歴史」を研究するさまざまな分野を総称する概念として使われるようになっている。歴史科学の哲学は近年になるまで科学哲学の中でほとんど忘れられた分野だったが、近年になって興味をあつめつつある。

ドレイ『歴史の哲学』神川正彦訳 培風館 1968年

本書は1960年代までの歴史学の哲学についての議論の様子を伝える教科書となっている。その後長らくこの分野の研究は低調だったので、この分野での議論の背景を知る上ではけっこう有用な本となっている。

ダントー『物語としての歴史―歴史の分析哲学』河本英夫訳 国文社 1989年

歴史学の哲学の中でも「物語的説明」として知られる説明のモデルを定式化したことで知られる本。研究書なので読みやすくはない。

野家啓一ほか『歴史/物語の哲学』岩波書店 2009年

科学哲学の一分野としての「歴史学の哲学」というよりは、より一般的な歴史の哲学をあつかった本であるが、伊勢田による「歴史科学における因果性と法則性」など、章によっては科学哲学的に読むこともできる。ただ、全体に文章の難易度は高め。

保城広至『歴史から理論を創造する方法 社会科学と歴史学を統合する』勁草書房 2015年

社会科学の哲学の知見を利用しながら歴史学を社会科学と統合していこうという野心的な本。入門書ではなくむしろ論争的な本。議論の哲学的な背景にもかなり踏み込んで紹介しているので、社会科学の哲学の入門的な知識も得ることができる。


3-7 応用科学の哲学

主な問い:応用的な研究分野の方法論はいかにあるべきか。応用的な研究分野において科学と社会の関係はいかにあるべきか。リスクという概念はどう分析されるべきか。

ここで取り上げるのは科学哲学の知見を環境リスクの研究など応用性の高い分野にあてはめる研究である。次の技術・工学の哲学とも密接に結びつくし、応用倫理学やSTSなどの隣接分野との結びつきもつよい。このあたりはどの研究がどの分野に属するか、という問いにあまり意味がない。

シュレーダー=フレチェット『環境リスクと合理的意思決定 市民参加の哲学』松田毅監訳 昭和堂 2007年

リスクの哲学と呼ばれる分野の古典の一つ。シュレーダー=フレチェットは環境倫理学者としても知られるが、本書ではそうした側面にプラスして応用科学の哲学の研究者という側面が強く出ている。特に前半で環境リスク研究の価値中立性についての科学哲学的検討が行われ、それをふまえて、こうした研究やリスク評価の合理性のありかたとして民主的な手続きが重要だと主張している。原書もけっして読みやすい本ではないが、翻訳になって読みにくさがさらに強まっていると思う。他に類似領域の日本語の本があるわけではないのでこれを挙げておく。

伊勢田哲治「応用科学哲学の問題としてのリスク」『科学哲学』38-2 77-91ページ 2005年

自分の論文であるが、シュレーダー=フレチェットも含めたリスクの科学哲学のサーベイ的な内容も含むのでここにあげておく。

3-8 技術の哲学・工学の哲学

主な問い:科学と技術(工学)はどのような関係にあるか。工学的知識の特徴はなにか。工学における「機能」の概念をどう分析するか。技術と社会、技術と価値の関係をどのように分析するか

技術の哲学は英米よりもむしろヨーロッパの非英語圏で盛んに研究されてきた。それもあって、科学哲学と関わるテーマもありつつも近年まであまり交流がすすんでこなかった。

[再掲]伊藤邦武ほか著『岩波講座哲学 9 科学/技術の哲学』岩波書店 2008年

全体に科学哲学よりも技術哲学に属する論考が多く収録されている。

フィーンバーグ『技術への問い』直江清隆訳 岩波書店 2004年

フェルベーク『技術の道徳化』鈴木俊洋訳 法政大学出版会(叢書ウニベルシタス)2015年

近年の技術哲学がどういうことをやっている分野かを知る上ではこれらの著作にあたるとよい。特に前者は分野外の人が読むことにも配慮された書き方になっているので読みにくくはないと思う。

伊勢田哲治 「工学的知識の独自性はどこにあるのか--ヴィンセンティの検討を通して--」 『科学基礎論研究』 vol.35 no.2 19-30ページ、2008年

工学的知識の特性についてはあまりよい書籍がないので自分の論文ではあるがこれを挙げておく。


3-9 数学の哲学・論理学の哲学

主な問い:数学の対象は何か。数は存在するか。数学的命題は分析的か。数学的知識はいかにして得られるか。数学と経験科学は本質的に異なるか。数学と論理学の関係はいかなるものか。論理的な真理とはなにか。論理的パラドックスはどう解決されるべきか。

「科学哲学」という言葉は通常は「経験科学の哲学」を指して使うことが多く、数学は別扱いにされることが多い。数学の哲学と呼ばれる分野も、科学哲学とまったく交流がないわけではないが、独自の問題設定でわが道を進んできた観がある。
論理学は科学哲学においても分析のツールとしてはよく使われるが、論理学の哲学となると科学哲学の本体とは少し距離があり、むしろ数学の哲学との結びつきが強い。

3-9-1 数学の哲学

シャピロ『数学を哲学する』金子洋之訳 筑摩書房 2012年

スタンダードな入門書の邦訳。数学の基礎に関する論理主義vs.形式主義vs.直観主義という対立や、数学的対象の存在論についての議論など、定番の話題が紹介されている。

飯田隆編『リーディングス 数学の哲学』勁草書房 1995年

数学の哲学の代表的な論文を翻訳してあつめた論文集。シャピロを読んでこの分野に本格的に興味をもったら手にとってみてほしい。

ハッキング『数学はなぜ哲学の問題になるのか』金子洋之・大西琢朗訳、森北出版、2017

「証明」や「応用」といった概念の変遷などを切り口に数学の哲学という営み自体を問い直す、ちょっと変化球の本だが、読み物として面白い。

タイルズ『集合論の哲学』三浦雅弘訳 産業図書 2007年

数学の哲学の中でも多くの哲学者の関心をひきつけてきた集合論についての本。歴史的にどのような議論がなされてきたかの紹介に重点がある。

ジャキント『確かさを求めて 数学の基礎についての哲学的論考』田中一之監訳 培風館 2007年

さまざまなパラドックスやゲーデルの不完全性定理をふまえつつも数学に確実性を確保しようとする哲学的議論の歴史を追う。

照井一成『コンピュータは数学者になれるのか 数学基礎論から証明とプログラムの理論へ』青土社 2015年

数学基礎論と論理学とコンピュータ科学の中間のような領域を扱った本。基本からはじめてP対NP問題やラムダ計算などかなり本格的な話題まですすんでいく。現在数学の哲学や論理学の哲学をする上で欠かせない知識がつまった本なのでこれらの分野に興味があるなら是非。ただ、タイトルのイメージだけで手に取るとちょっとあてが外れるかもしれない。

3-9-2 論理学の哲学

プリースト『論理学 (一冊でわかる)』菅沼聡訳 岩波書店 2008年

論理学を身につけるための本というよりは論理学の哲学のさまざまなトピックがわかる本なので、この項にはぴったりだが間違って買ってあてがはずれたという人も多いかもしれない。

飯田隆編『論理の哲学』講談社(講談社選書メチエ)2005年

論理学の哲学の主要な話題が分担執筆で紹介されている。